伝統技法が生む現代の光:内田 繁と浅野商店が紡ぐ「Paper Moon」の魅力

空間の佇まいや、そこに流れる時間までもデザインするインテリアデザイナー、内田 繁(うちだ しげる、敬称略 1943年 - 2016年)。20世紀後半から2000年代にかけて日本のモダンデザイン界を牽引した、日本を代表する世界的なデザイナーです。
商業空間、建築、家具、照明に至るまで幅広く手掛け、国内外で高く評価されてきた内田 繁のデザイン哲学は、今なお多くの空間設計や建築プロジェクトに多大な影響を与えています。
本記事では、内田繁の経歴やデザイン哲学とともに、1917年創業の老舗提灯メーカー「浅野商店」との協働によって誕生した名作照明器具「Paper Moon(ペーパームーン)」シリーズの魅力についてご紹介いたします。
内田 繁の経歴とデザイン哲学
内田繁は、山本耀司のブティックや神戸ファッション美術館、さらには「ホテル イル・パラッツォ」「門司港ホテル」といったホテル全体の総合的な空間デザインをはじめ、数々の歴史的名作を手掛けた巨匠です。
茶室「受庵・想庵・行庵」などに見られるように、伝統的な和の概念を現代的な意匠へ昇華させるアプローチでも知られています。
毎日デザイン賞、芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章、旭日小綬章をはじめとする数々の受賞歴がその偉大な業績を物語っています。
内田繁のデザイン哲学の根底にあるのは、「主張しすぎず、静かに空間へ溶け込む」という日本独自の美意識と、空間に心地よい「余白」を生み出す姿勢です。
単に機能的・造形的な美しさを追求するだけでなく、そこに集う人々の時間や雰囲気全体を包み込む空間演出を大切にしてきました。

浅野商店と「Paper Moon」シリーズの誕生
【開発の背景】内田繁とのコラボレーションのきっかけ
株式会社浅野商店は、岐阜県岐阜市にて100年以上にわたり国指定の伝統的工芸品「岐阜提灯」の製作を続けてきました。
1990年代後半、岐阜提灯の新たな可能性を模索していた浅野商店。岐阜の提灯の製造技術は他にない特徴を持っており、この技術を活かした現代のライフスタイルに合った商品を開発する必要があると考えていました。
現状のお盆提灯は守りつつ、このすばらしい技術の応用商品として新たな商品の開発を目指しました。
そんな時、岐阜県が主体となって創造的事業に尽力された方を顕彰する「オリベプロジェクト」の選考委員として内田繁が岐阜に来訪した際に、浅野商店の考えを伝える機会を得て、デザインを依頼することとなります。


【技術的挑戦とこだわり】「ペーパームーン」誕生における職人の試行錯誤
熟練の職人による細密な「ひご巻き」や「紙貼り」の技法を守りながらも、時代の変化に合わせた技術革新を意欲的に推進してきました。
内田繁が求めたフォルムは、従来の提灯の枠にとらわれない有機的な形状でした。これらを美しく表現するため、竹ひごの巻き方や和紙の貼り方に幾度となく改良が重ねられました。
繊細な竹ひごの反発力を考慮しつつ、張りのある優美な曲線を生み出す技術は、熟練職人の手技と粘り強い試行錯誤によって確立されたものです。
この浅野商店の高度な職人技と、内田繁のデザイン美学が融合し、1998年に誕生したのが「Paper Moon」シリーズです。
当時、浅野商店から内田繁にデザインをお願いするにあたり、伝統的提灯の技術を活かした、手軽に使える照明、そして出来れば提灯という伝統的商品にふさわしいパーマネントデザインの商品にしたいと依頼したそうです。
内田繁は、和紙の明かりの軽やかさ、落ち着きを意識した和紙とヒゴの組合せにこだわり、明かりを点灯した時に提灯を自立させる構造が極力見えないように工夫しました。使用している楮和紙そのものが耐久性を持っていることもあり、「光の透過性」や「耐久性」へのこだわりが実現しました。
こうして、岐阜提灯の伝統構造をベースにしながら、現代の住空間や商業空間にも調和する間接照明としてペーパームーンが設計されたのです。

【素材と構造の特徴】美濃和紙と折りたたみ構造がもたらす利便性と美
「Paper Moon」の持つプロダクトの特長と空間演出の強み
美濃和紙が生み出す「月の光」のような優しく柔らかい陰影
職人が丁寧に仕上げた上質な美濃和紙を通すことで、光源の強い光がふんわりと拡散されます。夜空に浮かぶ月のような穏やかな陰影は、ホテルの客室、ラウンジ、レストランの客席などに深いリラックス感と温かみをもたらします。

ユーモラスで有機的な造形美
「たまご」「ひょうたん」「おもち」など自然界の親しみやすいフォルムをモチーフとし、「わびさび」の美を表現しています。無機質になりがちな現代建築の空間に、アートオブジェのような一意の存在感と温もりを付与します。

多様なインテリアスタイルとの高い調和性
伝統工芸由来でありながら主張が控えめなため、純和室だけでなく、モダンな洋空間、北欧スタイル、ジャパンディ(Japandi)スタイルまで幅広く馴染みます。
搬入・移動に優れた機能的構造
螺旋状の竹ひご構造を生かし、コンパクトに折りたたむことが可能です。非常に軽量なため設置や模様替えも容易で、展示や施工現場での取り扱いやすさにも配慮されています。
【空間演出の強み】空間を引き立てる「主張しすぎない光」
「Paper Moon」は、単体としての美しさはもちろんのこと、空間全体との調和を一番に考えて設計されています。
光源を優しく包む美濃和紙から漏れる光は、空間に主張しすぎることなく溶け込み、宿泊施設、店舗、住宅などのあらゆるシーンで、静かで温かな空気感を演出します。

【内田繁のこだわり】日常に寄り添う「月の光」のような存在感
内田繁氏は生前、「Paper Moon」について『ただ明かりを灯す道具ではなく、夜空に浮かぶ月のように人々の心や空間にそっと寄り添う存在でありたい』という強いこだわりを持っていました。
道具としての機能美と、情緒的な安らぎを両立させたデザイン哲学は、今なお職人たちの手によって大切に受け継がれています。
あなたの暮らしに、ほっと心が和む柔らかな光を
「Paper Moon」が灯すやさしい光は、空間だけでなく、そこに過ごす人の心までじんわりと温めてくれます。
リビングでゆったりとくつろぐ夜や、ベッドルームで過ごす静かなひとときに――。月の光のように寄り添う灯りを、あなたの毎日の暮らしにも取り入れてみませんか?
伝統の職人技と洗練されたデザインが織りなす極上の癒やしを、ぜひお楽しみください。
作品集
Paper Moon1 Paper Moon2 Paper Moon3 H40cm
Paper Moon4 Paper Moon5 Paper Moon13 H86cm
浅野商店ブランド情報はこちら→
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